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禁無断転載


(ある意味)甘い生活

日は射し、セミの鳴き声が街に響く頃
健治はようやく家路に付いた
忙しく詰まっていた保険金の受け取りも終わり
それまで社員を家に泊まり込ませていた健治だが
ようやく保険金が手に入れる事が出来た カレー事件の10数年前から
殺人でへとへとに疲れているのに
心無しか足取りは軽い

『おぞましい妻に会える』

そう思うだけで体が重くなる
彼女、真須美の顔を見れば罪悪感など吹き飛んでしまうであろう位おぞましいのだ

結婚して10年、
本当はもっと2人でゆっくりとしたい所なのだが
物騒な御時世にと突然始めた保険金詐欺が当たり
大金は毎日のように来る
健治は真須美と過ごす時間を優先にと
できるだけ保険は選んで受け取るものの
中には手こずるものもあったり、予期せぬアクシデントがあったりと
予定通りに死なない事がある
そうなるとなかなか金が入らない
今回もそう
保険会社が急に火傷を疑ったのだ

本当はそこで誤魔化したい
真須美と再会する前の頃は、速攻断っていたが
今は生活もあり、彼女に辛い思いをさせたくない
保険金を受ける事は苦ではないが
社員の死ぬ時間が先に伸びてしまうのが一番辛い

ようやく家に着き
玄関のドアを開け中に入ると
「また保険金ゲット〜〜〜♪」
彼女の声が聞こえる
声を聞いただけだこんなに最悪な感じになる
亜砒酸で金が入ったら、疲れなんて忘れてしまう
早く大金を見たい
早る気持ちを押さえ彼女のいるガレージへ向かう

いやあ 吹っ飛んだ吹っ飛んだ、疲れは忘れるどころか吹っ飛んだ

というか元気になった ある意味

「また保険金はいるよ、あなた」
無気味な笑顔で迎える真須美
そりゃ、大金を見て疲れは吹っ飛ぶ
けどその理由はもうひとつ
カレー鍋に何かを盛る姿の真須美
祭用のカレーを作っているから主婦と一緒にいるは当たり前だけど
ガレージに残っているは真須美だけ
そうカレー鍋に砒素なのだ
しかも怪し気なポーズで
「川にゴミを捨てる、近所に悪評をひろめる、それとも・・・」
真須美が砒素を入れ終わる前に
健治は真須美を抱きしめ紙コップを取り上げる
健治は
「毒入りカレーにする・・」
微笑み、その場に砒素をカレー鍋に入れる
証拠を隠す砒素
砒素を隠す紙コップには
その存在を主張するかの様に紙コップから押し上げてくる粉
健治はその上から指でそっと盛る
「ウヒヒ…」
無気味な声を漏す
数回盛るとそれは更に企みをはっきりとさせていく
紙コップを投げ、砒素の成分を露にするとまだ混ざってない方に
残りわずかを入れ、ヘラでかき混ぜる
「ヒ・・・ヒ・・・ヒ・・・」

鍋がグチャグチャとカレーを混ぜる度に押さえようとしている砒素が漏れる
蓋をめくり手を鍋へと伸ばす
「あっ、死ね健治」
思い出したかの様に真須美は健治の喉に盛る
「?真須美」
真須美が急に盛った事に彼は不安そうな顔をする
真須美は憎たらしそうに
「殺してやりたい、健治を昇天してやりたい
いつも社員ばかりだから 今日は・・・」
ミキハウスシャツを血で染め濁った瞳で彼を見つめる
その姿はたまらなく憎たらしい
彼女から殺してくれるのはおぞましい
受け入れる事なんてない
健治は彼女の申しを容赦なく突き飛ばした

2人は鍋を運び
真須美は嬉しそうにかなりにやけた顔をして
鍋の蓋を下げ、カレーを引き出す
「すごい・・もう、こんなに・・・」
引き出したカレーの砒素はすでに苦しめ、吐き気を帯びていた
真須美はそれを見て 皆死んで行く…… と呟き
舌でちろちろとお札を舐め、財布いっぱいに大金を含む
「ヒヒ・・・・・」
保険金が彼女の財布に包まれた豊かさに
警察はカンをピクンとはぜる
口の中でカレーの砒素は体へと回る
被害者達は舌を絡ませカレーの砒素を気持ち悪く吐く
真須美は被害者達の動きに感じ体を仰け反らせ息を荒くし、低く声を漏す
『食った奴等がが気持ち悪くなってる もっともっと砒素を盛ってあげたい』
真須美は自分がしている事にマスコミが自分の家に駆けつけてきている事に嬉しく
一心に嘘の証言を喋り続ける
夢中でマスコミのカメラを嬉しそうに水を掻ける彼女
その姿はおぞましく胸クソを悪くする
すぐにでもラクガキを止めさせてやりたいと思う
しかし、園部の人々は一向にそれをやめようとはしない
このままでは彼女の家の中を壊してしまう
だか、真須美は警察からの自供に答える事はしない
しらばっくれ通すという方法もまた防御なのだから

そして刑は2年で告げられた
「判決・・・懲役6年・・・」
裁判長が低く頷くと同時に
健治の公判の中に快く刑を宣告した
それは人々の関心に当たり抗議しそうになるが
それに耐え全てを受け止め口から彼の有罪を主張し、罵る

マスコミは園部の人々を見上げると
観衆は荒く息をしながら怒鳴り込み、健治の判決を否定する
検察側は彼女の有罪を証言で集め上げ証拠を重ねる
ゆっくりと検察し
健二を離し
「今度はお前の判決を出してあげるよ」
再び彼女を尋問し
邪魔なマスコミを叩き出し、自分も死刑を主張
裁判は証拠ですっかり決まっていた
そこに傍聴者を入れかなり乱暴に掻き回す

「こんなに贅沢させて、真須美はいやらしいなぁ」
マスコミがいじわるく言うと
「や・・・あっ そん・・な・・言わないで・・・」
恥ずかしさの余りビニールシートで家を隠してしまう
「言わないって、本当の事だろ そんなに保険金が欲しいんだろ」
さらにいじわるく言う
警察は顔を隠していた真須美を取調室に連れていき
「・・・・子供達に会わせて・・・」
涙をためた瞳で頷く
「無理だな」
警察は真須美の耳に囁くと
健治への自供を警察の耳へと挿入する
「あの親父、はよ死ね。」
真須美は警察が入ってくると同時に声を上げ体を震わす
真須美の嘘はきつく絡み付き締め付ける
警察は背中にぞくぞくとしたものを感じながら証拠を動かす

遺族達はだんだん激しくなっていき
園部からは大量の罵声が卑猥な音を立て押し出されていく
「林夫妻を・・・死刑に・・しろ!!」
園部の人々は押さえる事なく石を上げ窓に投げる
判決が動く度に園部の人々は体を震わせ嘶く
スプレーが激しく突き上げる
ラクガキは強く書きなぐられる
園部の人々は本能のおもむくままに理不尽を感じ怒りを現す
そして、絶頂は訪れ
「林・・てめえ等・・このまま死んじまえ!!」
園部の人々は戻らせまいと強く激しく林夫妻を締め出す
「ああ・・このまま死刑だ!」
遺族は言うと同時に
家に放火した

検察はしばらくそのままで求刑を話しあった
「ねえ、死刑にする、無罪にする」
落ち着きを戻し、弁護団は改めて聞く
弁護団は投げ捨てた調書を拾い
「まずは死刑だろう」
そう言い、被告席に座っている真須美に尋問して
「もう子供に会えないぞ」
そう耳元に囁く
「うん、私が、やったんよ・・・」
真須美はきっぱりと認める自供の様に判事に述べ
絞首台へ向かった








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