プノンペン監獄日記



 日本人男性が、プノンペンの拘置所で人間不信に陥っている。

 今年一月に(プノンペンで)ネパール人とトラブルを起こし、誘拐と殺人未遂の罪で現在公判中のサカイ氏。元国語教師の彼が、一体なぜカンボジアでネパール人を誘拐してしまったのだろうか。

 もともと彼が日本で普通の生活を送っていたころ、妻が日本人という、流暢な日本語を話すネパール人が近づいてきた。初めは友達づきあいをしていたが、そのうち日本の中古機械部品を東南アジアに輸出しているという彼から、一緒にカンボジアでビジネスをしないかと持ちかけられ、サカイさんはこのネパール人に多額の金を貸し与えることになる。

 ネパール人は金を受け取るやカンボジアへ向かい、その後音沙汰もなく約半年が経過した。サカイ氏は彼を追ってプノンペンに登場、ネパール人の行方を探し続け、居所を発見するや、さっそく借金の返済を求めたが、誠意ある回答が得られなかったため逆上し、ついに報復を決意する。

 ある日、雇っていたタクシーの助手席にネパール人を誘い込むと、後部座席から殴打、そしてスタンガンで電気ショックを与えた。驚いたネパール人はそのまま警察署へ逃げ込み、サカイ氏の逮捕を依頼。警察がサカイ氏の部屋を捜索すると、ロープやスタンガンなどの証拠物件が出てきたため、その場でサカイ氏は拘束されることになった。

 結審までにはあと二ヶ月しか時間が無い。塀の中の懲りない面々は日本の約百倍狡賢く、サカイ氏から一ドルでも多くの金を巻き上げようと画策する。果たして彼は檻の中から出ることができるのであろうか。有罪になれば数年の懲役が課せられるという。ちなみに原因となったネパール人は、既にカンボジアから出国しているとのことだ。



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