プノンペン深夜三時



 路上での強盗被害が相次いで報告されているプノンペンだが、夜間の移動は実際どの程度の危険を伴うものなのだろうか。ある調査によると、カンボジア赴任者・旅行者の実に70パーセントが夜九時以降の外出を控えているという。なかには車での移動も避けているとの意見もみられた。しかし、「どぶのように暗い」と形容されたプノンペンの夜の姿は、市民の生活習慣の変化や街灯の新設などによって、大きく変わってきている。

 カンボジア正月の四月下旬、未明二時から四時にかけて、市内の主なエリアをバイクで走行してみた。日中、目印となっているガソリンスタンドが明かりを落としているため。交差点の印象が違って見える。変わって目につくのが、フルーツジュース屋の明かりだった。モニヴォン通りのセントラルマーケット付近や、シアヌーク通り以南の夜屋台街などはまだ充分に明るく、客もひけきらず賑わっている。勿論、スラムやオリンピックスタジアム周辺など、静まり返ったエリアもあるが、中心部の大通りに限って言うと、治安面の不安はほとんど感じられなかった。

 また、午前四時すぎからは、メインストリートで市の清掃人がおもむろに作業を開始し、通り沿いには多数の人夫が現れる。プノンペンが睡眠し闇に包まれるのは、深夜三時から四時の僅か一時間あまり。この間隙さえ回避すれば、危険に直面する可能性を極めて低くできると考える。

 治安面の悪化ばかり伝えられるプノンペン市だが、この人口80万都市において、夜の静寂は昔のものとなっているのが現実である。

アリムラヨシヒロ・放送作家



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