旅人たちの痕跡



 プノンペン中心部。182ストリートにある世界的に有名な貧乏旅行者たちの拠点「キャピトルゲストハウス」の一階には、宿のオーナーが経営する同系列の食堂があり、朝五時から夜十時までの営業時間の間、日本ではその筋の病院に行っても拝めないような、おかしな旅行者や怪しげな定住者(人種問わず)、彼らを目当てにやってくる乞食やタチの悪いバイタク運転手、オバケのような売春婦たちで大いに賑わっている。

 そしてこの店の会計カウンターの前には、かれこれ四年以上も前から、心ない人間に盗まれたり破かれたりコーヒーをこぼされたりしながらも、今に至るまで様々な情報やつまらない喧嘩や独り言が、延々と日本語で書き綴られた一冊の情報ノートが吊されているのだった。

 ここでは噂の情報ノートに書かれている情報のなかから、特に面白いものを原文のままピックアップして紹介してゆく‥‥。

●モニヴォン通りにある台湾料理店「台湾随意小吃」とっても美味でした。炒飯二ドル、麻婆豆腐(ちょっと辛かったけど美味しかったです)二ドルでした。白飯を注文してマーボー丼にしてみたけど、超激美味。ここの店員さんは英語全く通じないので筆談してみよう。Naoko Ninomiya

●キャピトール周辺のバイタクはたちが悪いので注意してください。まず、普通の流しより相当高くふっかける。タクシーの予約をしても来ない。来ないのでこちらがアセったところを突いて、ふっかけてくる。だから、ここのバイタクは頼まないように。

●カンボジアはいい人が多いよ。ベトナムよりも‥‥。ただいまここにはまっています。ベトナムには二度と帰らない。ビザ代50ドルも払ってあんなイヤな思いをするのは、ごめんこうむる。50ドル払うならラオスかカンボジアにいるね。ベトナムのバカヤロー。だけどアオザイ姿の女子高校生はたしかにいいね。あれを見ると日本の女子高生の制服はカスだね。以上。

●いま警官に金を奪われました。モニヴォン通りをバイタクに乗っていたところ、白い私服を着た者がバイクを横付けし、MPの前に止まるよう言われました。そしてMPのほうに来いというので、A君がイヤな顔をしたところ、A君の胸へ私服の奴がグーでパンチをしてきました。やむおえずMPの前まで行ったら、私服の奴が僕のポケットをさぐり、財布を要求してきました。夜八時ごろです。彼はいきなりキレてました。ウォー。

●プノンペン・パチプロへの道。5ドルで500発なので日本の約1/4です。当然勝ちの確率も1/4です。自分の玉を流すときにはピッタリにしましょう。2365発↓23ドルにされますから‥‥。かけもちもオーケーです。負けて文句を言うなら、最初から行かないようにしよう。



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