はい。例によって「エネマグラ教典」の没原稿です。つまらなくても、関係なくても、意味不明でも怒らないように。だってこれ没原稿なんですから。あくまで読者サービスの一環です。というわけで、核心につきましては本書をお読み下さい。

──ドライ・オーガズムとはなんぞや。それは、ひとりで楽しめる究極の快楽。エネマグラとはなんぞや。それは、ドライに続くスーパーハイウェイへの片道切符。

詳しくは「エネマグラ教典・ドライ・オーガズム完全マニュアル」太田出版・刊をごらんあれ。

 

 

△小渕元総理の生写真
できれば「平成」という額を持っている写真が望ましい。


不適切な場所で勃起を抑える法

「お客さぁん、もうすぐ時間なんですけど」

  プロフェッショナルな技巧をもってしても、私のなまけチンポはピクリとも反応しない。相手は一生懸命やってくれるんだけど、そんな荒々しさが逆に萎えさせる。
  仕方ない……。とばかりに目を閉じ、オリジナル妄想エロネタを必死で頭に巡らしながら、半ば義務感で勃起させて射精。ハイお疲れ様。じゃあシャワー浴びてください。

「不甲斐ない……」

  武田信玄のようにつぶやき、手の平で顔を覆いながら合戦場を後にする落ち武者ひとり。風呂場の水も心なし冷たかった。
  そんなこともあるかと思えば、風俗帰りの満員電車で目の前に突きつけられた胸の谷間の白さに反応。さっきまで萎びていたはずのチンポが不必要なまでに勃起。おい、今更なんだよ。
  勃起するだけならまだいいが、その強張りが意図せず隣の女性の尻に当たってしまった瞬間、痴漢行為が成立してしまう世知辛い21世紀。俺は関係ないから逮捕するならチンポだけ逮捕してくれ!。などといった言い訳が通じるのは中学二年生まで。社会人では通用しない。本当に困る。
  そんな不適切な勃起をなんとかして抑えられないものか?。多くの男たちが苦悩し、無数の墓標を残してきた。
  勃起抑制法として思いつくことといえば、頭の中で童謡を歌ってみたり、記憶を辿りつつ、相撲の番付表を読み上げてみたり、母親の顔を思い浮かべてみたり、死んでしまった犬や猫の冥福を祈ったり……。とにかく必死である。
  なぜ、勃起は思い通りにコントロール出来ないのだろう。もしも可能としたら、混浴温泉で突然入ってきたピチピチ若妻グループに勃起チンコを注視されることもなく、さわやかに対応できるだろうに……。タオルで股間を隠して申し訳ない気分でその場から去ることも無いだろうに。そんな訳で、勃起のメカニズムから追っていきたい。

 勃起というのは、平常時と比較してチンコに血液が大量集中している状態のことをいう。そのものズバリの充血状態。
  海綿体に流れ込む血液を川と想定するなら、雄大なる長江に三峡ダムがあるように、血液の川にも途中で流れを調節するダムのような器官が存在するはずで、それが「平滑筋(へいかつきん)」という海綿体にある筋肉細胞である。
「筋肉なら鍛えりゃいいんじゃないか?」
  そう考えるのは自然な流れである。しかし、残念ながら平滑筋は自分の意志でコントロール不可能な筋肉なのだ。ならば不適切な場所での勃起もしょうがないね。許してよ、ねぇ。と諦めモードに入りたくなるが、ちょっと待った。
  例え自分の意志でコントロールすることができなくても、エロ情報には充分コントロールされてるではないか!。つまり「ツボにはまるエロ写真」と「小渕元総理の生写真」などを交互に見比べることで、勃起状態と平常状態を短時間で意図的に繰り返し、平滑筋の筋力を鍛えることができるのでは?。と思う次第である。
  同様に、やけどしない程度の熱いお湯と冷たい水をチンコへ交互にかけることによって、平滑筋は緊張と弛緩を繰り返し、鍛えられていく。

 このような筋肉の動きを、条件反射的に身体へ植え込むことができれば、勃起の完全コントロールも夢ではない。
  まずは熱めのお湯をはった湯船の横に、水を入れたビニールプールを準備。無ければ水シャワーでもいい。そして、熱い湯船に入ったときはエロ写真を思う存分見まくり、勃起させる。
  勃起したらすぐ水プールに移動。もしくは水シャワーをかけまくる。身体を急速に冷やしながら小渕元総理の写真へ冥福を祈り、チンポを落ち着かせる。落ち着いたら熱い湯船へ。
  これを毎日50セット。心臓発作には注意しよう。
  マスターした暁には、目の前で露出狂の変態カップルがスワッピングを始めたとしても、勃起の前兆を悟った瞬間、タライで水をかぶれば勃起が収まる。かもしれない。
  なんてことを書いてきたが、ここでハタと気が付く。カッパじゃあるまいし、普段から水ばかり捜してるわけにもいかないだろう。それに水で勃起が静まるのは結構だが、反対にお湯へ浸かった瞬間、問答無用で勃起する体質にもなってるんじゃないか?。人生、うまく行かないことの方が多いという教訓か。
  結論としては、ダムの開閉速度を上げることができても、開閉ボタンのメカニズムがわからない限り、勃起をコントロールするのは難しい。
  その、秘密のベールに包まれた開閉ボタンとは……。やはりというかなんというか、脳の性中枢に関係するという。つまりは、当人がエロい気分だぜ! と感じているかどうかがスイッチなのだ。
  こうなると、話の核心は煩悩ともいわれるエロ気分のコントロール法ということになる。まあ、興味のある人はチベット密教の指導者なり、アマゾンの裸族の方にでも問い合わせていただきたい。どっかの寺で修行するのもいいだろうし、チンポケース着用というやり方もあるということで。
  実際、そんな努力をするよりも、マラソンでもして逃げ足を早くしておいたほうが身のためかも。勃起したまま日常生活を行うことが許される日が来ることを願って。
(プロステート下条)