解説
サウジ宝石事件(94.10.14)

 八月一日、サウジ宝石事件の重要証人である宝石商サンティ氏の妻子がサラブリ県の路上で駐車していた乗用車から死体で発見された。

 当初、法医学研究所は事故死との検死結果を発表。しかしこれに対しては警察局内でも疑問視する者が多く、特に犯罪制圧課は早くからこの結果に異議を唱えていた。またタイ人の大半も今回の事件を「サウジ宝石事件に関係した警察高官による事件」とみていた。

サウジ宝石事件とは・・

 サウジ宝石事件は89年、サウジアラビア王宮で下働きをしていたタイ人労働者クリアンクライが、大量の宝石(5億バーツ相当)を窃盗。タイに運び込んだことに始まる。

 その後、サウジアラビア政府はタイ外務省に犯人の追跡と宝石の返還を要求。このため警察局ではチャロー警察中将をリーダーとする捜査班を設置し、クリアンクライを証拠品とともに逮捕することに成功した(クリアンクライは五年の懲役判決)

 宝石はチャロー中将により無事サウジアラビアに送り届けられ、事件は解決したかにみえたがこの直後、返還された宝石の80%がニセモノと判明。深刻な国際問題に発展した。

 間もなくサウジアラビア政府は、タイ人労働者の入国禁止、自国民のタイへの旅行禁止を発表するとともに、宝石の返還を再度要求してきたため、アナン首相(当時)は再捜査を指示した。その結果、四人の宝石商が事件に関与していたことが判明、この宝石商の一人が、今回妻子を殺害されたサンティ氏だった。さらに数名の警官も灰色の札を貼られることになり、その中には今回逮捕されたチャロー警察中将をはじめ、サワット元警察局長官、サノン警察局法律顧問といった警察局のトップも含まれていた。

真相解明への期待

 犯罪制圧課では、サンティ氏の妻子殺害事件真相解明のため捜査委員会を設置。ソーポン警察中将、及びチャロー警察中将(五年前のサウジ宝石事件発生時の捜査主任)の警察高官二人を逮捕することに成功した。現在両人はバンコク特別刑務所に拘禁されており、面会も制限されている。

 現在特に注目されているのが、プラティン前警察局長官の動向だ。先に逮捕されたソーポン容疑者が「妻子を誘拐するよう指示したのはプラティン長官(当時)」と供述しているため、同氏の取り調べが14日に実施されることが決定したからだ。

 プラティン氏の実直な人柄は多くの人の知るところであり、事件関与の真相は謎となっている。しかし先月末に定年を迎えた同氏は、かねてより「自分の定年までに同事件を解決したい」と表明していたこともあり、功を焦り事件に関する情報を収集しようとして妻子を誘拐した可能性も否定できないでいる。

 現在、犯罪制圧課の捜査は各方面から高い評価を受けているが、未だ多くの宝石の行方が分からないこと、事件黒幕の影響下のためか、サンティ氏の取り調べが進んでいないことにいらだちを感じたコジャ・サウジ代理大使が「宝石返還がこれ以上遅れた場合は、これまで自分が書きためていた事件の経過を映画化する。すでにハリウッドがコンタクトしてきている」と脅迫する場面も出てきている。