クーデター謀議のタイ人(94.10.28)

 10月28日、カンボジア軍事法廷は7月2日に発覚したクーデター未遂事件の判決を言い渡した。

 今回のクーデター未遂事件で容疑者として名前が挙がっていたのは、カンボジア側では○チャクラポン殿下(前副首相)、○シン・ソン元国家治安相、○シン・セン前内務副大臣、○テス・チョイ前内務省警備局長を始めとする十二人。

 一方タイ側は14人が逮捕されているが、うち5人は8月19日に釈放されており、この日の公判には残り9人が出廷した。(チャクラポン殿下とシン・ソン氏は既に国外へ脱出している)

 判決当日の早朝、最終尋問が行われた。ここでシン・セン前内務副大臣は軍隊の移動を命令したことは認めたものの、それはポル・ポト派の攻撃に対応するためのものであり、クーデターの意図はなかったと容疑を否定。またテス・チョイ前警備局長は「シン・セン副大臣の命令通りに動いただけ」と証言した。

 証人として出廷したチャイ・サン・ユン国防副大臣は「シン・ソン元国家治安相から、プノンペン内の電線・電話線を切断するよう命令を受けた。近代兵器を装備したタイ人を数名目撃した」と犯行を裏付ける証言をした。

 9人のタイ人容疑者のうち、最も高学歴の(大卒)ナロンチャイ・タンティウニット氏は「カンボジアでの製材業及びカジノ経営の事前調査のため入国した」と主張。他の8人も入国目的は求職のためで、クーデターなどは全く意図していなかったと容疑を否定した。

 結局、カンボジア軍事法廷は、国外逃亡中のチャクラポン殿下とシン・ソン元国家治安相に懲役二十年。シン・セン内務副大臣には懲役十年の実刑判決。その他の者には懲役五年から二年の執行猶予付き判決を言い渡した。このためタイ人は全員が帰国を許される事となった。公判後釈放された9人は、同日午後6時、ドンムアン空港で家族・親戚と涙の再会となった。

 カンボジア政府はこのほか、今回のクーデター未遂事件に関与した疑いがあるとして、アドゥン・プンスート内務省顧問、IBCカンボジアの幹部であるクライサック・シーウティオン氏の尋問を要求しているが、両氏は容疑を全面否定している。

 チュアン・リークパイ首相は今回の事件に対し、私見であると前置きしたうえで「タイ人容疑者の一部は実際にクーデター未遂事件に関わっていた疑いが強い」と発言しているものの、タイ政府としては事件への関わりは一切無いことを合わせて強調した。

 一方、タイのマスコミの論調は、拘束されたタイ人に対し同情的なものが大半だ。

 タイラット紙は「カンボジアでの拘留生活が原因で性的に不能になってしまった。昨日もサパンクワイ地区の売春宿へ遊びにいったが、まったく戦闘可能にならなかった」との記者会見での発言を掲載したほか、マティチョン紙も「4メートル四方の部屋に6人が押し込められたため、ひとりが寝返りをうつと全員がそれに合わせて向きを変えなければならなかった。特に苦痛だったのは、誰かが大便をするとその匂いが部屋中に充満し、なかなか消えなかったことだ」「食事がひどかった。出てくるのは腐った魚、米、濁った水ばかりで喉を通らず、三ヶ月で10キロやせてしまった」とカンボジアでの劣悪な刑務所生活を強調する記事が多かった。